第6教室:『ボヴァリー夫人』(只今学習中)/ 過去記事保存中『ココット嬢』『最後の授業』

『ボヴァリー夫人』を読んでフランス語の学習をしましょう.

語学学習日記(フランス語学習)『最後の授業』(26) ドーデ短編集より


最後の授業(26)
 
LA DERNIÈRE CLASSE
Récit d'un petit alsacien


————————— 【26】————————————————
  
On  n'entendait  rien  que  le grincement  des plumes  sur le
papier.  Un moment des hannetons entrèrent;mais  personne
n'y  fit  attention,  pas  même  les  tout  petits  qui  s'appli-
quaient  à tracer leurs bâtons,  avec un cœur,  une conscience, 
comme si cela encore était du français ...Sur la toiture de 
l'école,  des pigeons roucoulaient tout bas,  et  je me disais en
les écoutant:
   « Est-ce qu'on ne va pas les obliger à chanter en allemand,
    eux aussi ? »

—————————— (訳)—————————————————

ノートの上を走るペン先のカリカリという音以外は何も聞こえ
ませんでした.一時、何匹かのこがね虫が入ってきた;しかし
誰一人そのことは気にも止めなかった.ほんの小さな子たちで
さえ、棒に掛けた手本を写すことに専念していた.まるでそれ
もフランス語の授業であるかのように心を込めて、意識を払っ
て写し書きをしていました....校舎の屋根には鳩たちがとて
も小さな声でせつなく鳴いていました.そして私はそこの鳩た
ちの声を聞きながら、ひとり思ったのです:
   「今に鳩たちもドイツ語で余儀なく歌うことにならない
   かな?」


—————————— 《語彙》———————————————
                
entendait:(半過去3単) <entendre (他) 聞く、聞こえる   
grincement:(m) ❶軋らせること、軋むこと; ❷軋む音 
plume:(f) ペン、ペン先           
un moment:(副) ほんのしばらく、一瞬
  注意:不定冠詞 un がついているから「名詞」だと思って
     後続のdes hannetons を「こがね虫の」とやってしまっ
     てはいけません.こがね虫の瞬間が entrèrent、入った、
    では意味不明です.フランス語講読の時間に、先生に
    当てられて訳す番がきて、強引にそのまま「こがね虫
    の一瞬が入った」とすれば、どこに入ったのですか?
    と聞き返されますのでね.いじわるな先生に困らされ
    ないようにしましょう.           
†hanneton:[アンヌトン] (m) こがね虫 
entrèrent:(単純過去3複) <entrer (自) 入る 
fut:(単純過去3単) <être  
s'appliquaient à ~:(半過去3複) <s'appliquer à ~ qc ~に専念する
     s'appliquer à + 不定詞   ~することに専念する、
         [~することに] 身を入れる
        Il s'applique à achever son travail.
        彼は仕事を完成させることに専念している.      
bâtons:(m) 棒、棒状のもの;ここでは机に備わった棒状の書見掛
    けのようなものと思われます.これにみんなは先生が用意
    してくれたお手本を掲げて習字していたということでしょ
    う.
pas même les tout petits:personne ne の効力が切れたので、pas で
    もう一度否定形を作っています.「誰一人~なかった、
    そして全く小さな子でさえも~なかった」 
tracer:線引きする、描く;ここでは手本を見ながら、素描するよう
    に習字の練習をしていたということだと思います.
        tracer にはデッサンするという意味もあります.
    先生の手本をデッサンするように真似て書いていたという
    ことでしょうか.
conscience:(f) ①意識、自覚; ②良心       
cela encore était du français:これもまだフランス語の一部だった.
      前方のcomme si とセットで「まるで~かのように」と
    なります. 
       「習字もまるでフランス語であるかのように」と言っている
    のだと思います.           
toiture:(f) 屋根       
roucoulaient:(半過去3複) <roucouler (自) 鳩がくうくう鳴く
         ②せつなく歌う、せつない声で歌う、ささやく    
bas:(副) ①小声で、②低音で、③低く、下に       
eux:[øウー]3人称複数強勢形  「彼ら」
   ここでは「あの屋根の鳩たち」
on va les obliger à chanter:あいつら(鳩たち)を歌わせることになる
on va les obliger à chanter en allemand:あいつらをドイツ語で歌わせる
                 ことになる
Est-ce qu'on ne va pas les obliger à chanter en allemand, eux aussi ?
鳩たちもドイツ語で歌わされることにならない? 
                               (とひそかに思った)