最後の授業(19)
LA DERNIÈRE CLASSE
Récit d'un petit alsacien
——————————— 【19】————————————————
mais je m'embrouillai aux premiers mots, et je restai de-
bout à me balancer dans mon banc, le cœur gros, sans
oser lever la tête.
———————————— (訳)—————————————————
しかしぼくは、出だしの言葉から、躓いてしまった.自分の席に
立ったままもじもじして、胸がいっぱいになって、顔を上げるこ
とさえ出来なかった.
——————————— 《単語・註釈》———————————————
m'embrouillai: (単純過去1単) <s'embrouiller (代動) もつれる、
[マンブルイエ] 混乱する、わけがわからなくなる
s'embrouiller dans ses explications / 説明がもたつく
aux premiers mots:出だしの言葉から、
se balancer:[文] ためらう、ぐずぐずする.
restai debout:(単純過去1単) <rester debout 立ったままでいる
このあとの 不定詞を伴う[à] は「継続」を表して「~しながら」
rester debout à se balancer / 立ったまま、ぐずぐずする.
je restai debout à me balancer / ぼくは立ったまま、もじもじしていた.
le cœur gros:胸が一杯で
le cœur は名詞ですが、ここでは後続のgros がle cœur を主語にして
その述語となり、主述構造をもつ名詞句となります.
le cœur gros de sentiments divers / 様々な気持ちで胸が一杯になって
ということです.
一般に、主文の主語に所属する名詞(特に心や身体)が前置詞なしで
置かれた場合でその名詞が後続語を従えている場合は、その名詞+
後続語の間に「主語、述語関係」が成り立っている場合があります.
とりあえず「名詞構文」と仮呼称します.
oser:(他) [oser + 不定詞] あえて~する;
否定文で「~すらできない」
sans oser ~ も一種の否定文で「~すらできずに」
sans oser lever la tête 頭を持ち上げることすらできずに